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文字指導10回パッケージー課題研究が採択されましたーJES小学校英語教育学会

 宮城教育大学 鈴木渉先生 イギリス アシュブルック小学校 山下桂世子先生 守口市さつき学園 北野ゆき先生 大阪教育大学 柏木賀津子の4名で、JES小学校英語教育学会での、課題研究を2年間(2020-2021)させていただくことになりました。

 

課題研究採択:「エビデンスベーストの英語の読み書きー小学校外国語科を支える10回パッケージ文字指導の提案―」

 

英語の綴りは、偶然では読めるようにならず、まして、書けるようにはなりません。母語の日本語とはまったく違い、不規則が多く先頭の音や終わりの音というように、音のかたまりを耳で聞き分けたり、かたまり部分がわからないと読めるようにならないから、英語を母語とするUSAやUKでも5歳頃から9歳頃までゆっくりと、指導します。英語圏でさえその指導をよく理解している先生ばかりではなく、日本ではその指導の必要性がまだ一般に伝わっていません。トップダウン=なぞるだけ で読めるということは幻想です。従来はその指導が中1の入り口でしたが、中学校でもこれは指導されておらず、多くの中学生が読めずに、暗記のみで凌いでいたと言えます。暗記には限界があるので、英語嫌いがうまれます。それが小学校5年生開始になり、この指導は日本の英語の先生があまり得意ではないまま、今日まできてしまいました。ここの指導を誰にも分かりやすくモデル化して、教材もすぐに使えるようにしたいと思っています。これから始まる小学校英語の文字指導で、全国の子供たちが、英語の読み方がわからなくて、さらにわからないまま、ただ写し書きしているという事態にならないように、初歩の読みで躓いてしまわないように、エビデンスをしっかり示して、取り組んでいきます。英語圏の研究でも、初めての英語の読みとの出会い方は(たのしく、理論にそって、学び合いながら、学級の良い雰囲気の中で教わる方法)、その後のReadingにも大きな影響を与えることが分かってきています。また、2020年からは様々な教科書が各地で使われますが、メンバーは一同、どの教科書が・・・とかどのフォニックスが・・・という違いを超えて、もっとも基本になる指導コンセプトをまとめ、学級担任の先生だからこそ、クラスメートどうしだからこそ、出来るグループ指導に集中します。メンバー一同、心をこめて取り組みますので、ご興味のある方には、是非、2020年は10月 2021年は7月の、JES全国大会でお会いできますよう。

 

 

計画書の一部です。

 

2020_2021 JES課題研究 研究計画書   

研究テーマ 「エビデンスベーストの英語の読み書きー小学校外国語科を支える10回パッケージ文字指導の提案―」


研究責任者
所属・連絡先 ・氏名 柏木賀津子(かしわぎかづこ)(大阪教育大学)
・Email:kashiwag(a)cc.osaka-kyoiku.ac.jp

研究担当者・所属 例 代表 
・柏木賀津子(かしわぎかづこ)(大阪教育大学)
・鈴木渉(すずきわたる)(宮城教育大学)
・山下桂世子(やましたかよこ)(Ashbrook小学校 英国)
・北野ゆき(守口市さつき学園)

(1) 研究の概要
本研究では、「英語の音と文字の綴り」に関する理論を統合的にまとめた上で、日本語を母語とする児童が、初めての絵本を読むようになるまでの「15分×10回」の活動を開発し(英語の読み書き10回パッケージ:10P)、WEBで配信することである。2つの公立小学校での指導効果は「10Pチャレンジクイズ」を作成し事前事後比較により分析する。フォニックス指導の様々な異なりや教科書ごとの違いを超えて、担任が学級で取り組める文字指導の手順と方法を提案したい。研究対象は、日本(11-12歳)とイギリス(読みの指導が始まる様子の把握:5-7歳)とする。内容は、1、英語の音声と意味の繋がり(form-meaning connections)の検証、2、英語の読みのレディネス(reading readiness)の検証で、①と②の相関や、①の程度による②の違い、10P指導の浸透と児童の興味付け等を探る。「初めてのデコーディング絵本」を作成し、日本の児童が自立して英語を読むようになる指導方法を、得られたエビデンスと共に提案する。

(2) 研究の背景・目的等
2020年度外国語科では、豊かな文脈の中で思考や表現を取り入れたコミュニケーションを行うことが期待されるが、文脈の中の初出単語の読みが全く推測出来ず暗記になると、英語を難しいと感じる児童が増えることが懸念される。英語を母語とする国でも、英語(国語)の読み書きは他の言語より難しく、子どもへの指導1年目の読み書きの成功率は、ドイツ語・イタリア語等では98%であるのに英語では33%と低い。初等教育段階の読み書き指導の「質」が脳における読みの認知プロセスにも大きく影響し、その後の英語Reading能力を左右する(Joshi, M. 2019)。Joshiは、英語の読み書きには、CMRモデル(認知の方法・動機と興味・学級の雰囲気や環境)が重要であると述べ、しかし、初等教育の教員がその指導法を熟知していないことが課題であると述べている。この問題は日本の英語教育ではまだ議論に上っていない。そこで、本研究の目的は、日本の児童や学校に合った「文字の表記, 単語の認識(複数文字がまとまって単語となる)」「文字と音(音素の認識)関係」「文字と読み方の一致」など,音韻認識・音素認識を育てるプロセスを提案することである。

(3)研究の具体的内容・実施体制等
1)1年目の研究で目指すこと
【教材開発・効果検証のためのクイズ作成・公立小学校Aでの実践】
フォニックスの様々な指導法と日本での検証結果をレビューし、「音への繊細さ」を育て、Onset(はじめの音)とRime(終わりの音)を耳で聞き分け、単語の分化と統合のプロセスの指導を実現化するための具体的活動を15分×10回(10P)に作成する。活動で使用する絵・教材・カルタ・音声を準備する。検証方法は、2種類のクイズ(①音声と意味の繋がり②読みのレディネス)、フェイスシートに拠る10P指導の浸透と児童の興味付けを探る。公立小学校Aでの実践を行い、事前と事後の比較・分析を行う。また、①と②の相関や、①の程度による②の違い、日本の児童の「読み書き」の特徴を分析する。英国の小学校での読み書きの様子も把握する(5-7歳)

2)2年目の研究で目指すこと 
【1年目の10Pのフィードバック整理・改善・公立小学校Bでの実践・教材のWEB化】
公立小学校Bでの実践と分析を実施する。また、3種類の教材のWEB配信を準備する(1、理論・方法・教材、2)2種類のチャンレンジクイズ、3)初めてのデコーディング絵本)。デコーディング絵本は諸外国で出版されているが、日本の児童の日常生活には馴染みが薄い。そこで、絵本は、10Pで学んだ「英語の音と綴りの関係」が閉じられた形で結びつく絵本(closed task)を作成する(Kashiwag&Nakata, 2018)。日本の小学生の日常の話題(友達、給食、校外学習、教科の勉強などのファンタジー)をもちいる。10Pの中盤では、児童の気づきや活動中の対話から指導の留意点も明らかにしたい。

3)研究の実施体制
①チャレンジクイズ開発・10Pの開発と指導方法(柏木賀津子)実践と分析(全員)
②海外文献レビュー・研究の手続き(鈴木渉・柏木賀津子)
③10PWEB化・デコーディング絵本作成(北野ゆき・山下桂世子・柏木賀津子)
⓸実践と分析・イギリスの読み書き指導開始年齢のデータ/質的分析・日英比較(山下
桂世子・柏木賀津子)

引用文献
Joshi, M.(2019).The Componential Model of Reading (CMR): Implications for assessment and instruction of literacy problems, In D.Kilpatrick, M.Joshi., & R.Wagner (Eds.),Reading development and difficulties:Bringing the gap between research and practice 1st ed.(pp.1-18).Switzerland: Springer
柏木賀津子・中田葉月(2018). 「音韻認識からはじめる「読むこと」へのゆるやかな5ステップス」『JACET関西紀要』第20号,136-155頁

 

 

(4)研究スケジュール
月/年度 2020 2021 
4月
 10回パッケージ(10回P)教材完成
10回実践開始 2020年の10Pフィードバック整理と改善(WEB版) 
5月 チャンレンジクイズ完成―事前テスト
10回Pを活用した
授業実施(公立A校)15分×10回
(テストの信頼性検証) チャンレンジクイズ(WEB版)完成―事前テスト
10回Pを活用した
授業実施(公立B校)15分×10回 *チャレンジクイズ事前・事後(評価方法)

*C校検討
6月
 チャレンジクイズー事後テスト試行
10Pの1~10段階で活用できる絵やカルタ、教具を完成(WEB版) チャンレンジクイズー事後テスト
事前・事後テスト
分析(児童の興味付け・学級の雰囲気・環境を含む)
 0Pの最終ステージで活用できる、初めてのデコーディング絵本を完成(WEB版)
(日本の小学校の日常の話題をモチーフに)
7月 研究大会 発表
(⇔10月) 研究大会
 口頭発表 
8月 事前・事後テスト
分析(児童の興味付け・学級の雰囲気・環境を含む) 10回P教材活用の啓蒙や研修
フィードバックを得る
9月 研究大会口頭発表
10Pの実演・指導方法・チャレンジテスト分析結果 学会誌論文原稿提出
9月末 
10月 研究大会 発表
 10PパッケージのWEB配信・指導の手引きを
作成(理論と実践方法) 
11月  小学校現場での活用をサポート 
12月 中間報告(課題研究委員会へ)12月末 

1月   
2月 イギリスの読み書き開始前後データ取得  
3月  学会誌発行 

 

(なお本様式は、JESのHPに、募集要項とともに掲載します。)

ダウンロード
(柏木)2020-2021 JES課題研究計画書(柏木山下鈴木北野).pdf
PDFファイル 352.0 KB
ダウンロード
10回パッケージ現在案.pdf
PDFファイル 255.8 KB
ダウンロード
JACET関西紀要論文ー5ステップス文字13_柏木.pdf
PDFファイル 1.8 MB
ダウンロード
英語のデコーディング指導の困難と指導のあり方ーMalatesha Joshi.2
PDFファイル 5.5 MB