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フィンランドー現象ベースの学習ーKaisu-Leena教諭の実践

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フィンランド海外教育実習2019ー授業記録①Kaisu-Leena教諭の実践から
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タイトル 『フィンランドの一人の教諭の授業から学ぶこと-教育のリーダーシップ-』

 

さて、本稿では、筆者が、2018年にフィンランドにおいて在外研究の半年を過ごさせていただいた際に出合ったTeacher Agency(教師として自ら運営行為に臨む)を、お一人でも実行されているKaisu-Leena教諭の授業に触れたいと思います。彼女の授業への取り組みは、私たちが参観した90分では分からないほど広範囲であり、他の教諭にも保護者にも惜しみなく授業方法を紹介しています。この度は、わたしたちのメンバーにも、その一端が伝わるように授業を公開してくださいました。このような取り組みは、フィンランドの高度に整ったICT教育環境のみで成り立っているものではなく、2020年フィンランド学習指導要領を読み解き、今学校にある「強み」を最大限に生かし、目の前の児童が何に興味をもっているか考え、何の力がまだ足りないのか、を統合して推進されているものです。、決してフィンランドだから出来ている取り組みでなく、フィンランドの教員においてもこのような『現象ベースの学習』(2020年学習指導要領)はこれから取り組む方法なのです。一人の教員として、同僚をリードしていくための取り組みであることが、メンバーの皆さんに伝わっていればと思います。

 

 

 

2.Kaisu-Leena教諭 国語×社会×ICT×絵画 テーマ学習

 

 

 

「古代エジプト文化を現代の学びに生かす」

 

 

 

児童:5年生の児童18人、(国語はフィンランド語である)

 

背景:この授業の前に3週間の学習があり、4グループに分かれての90分のプロジェクト学習である。

 

 

 

まず、私たちが教室に到着する前に、Kaisu-Leena教諭は、ピラミッドの3D画像を使って、古代エジプトのストーリーを5分ほど語り、児童が既に学んだ知識についてやりとりをした。次にの活動をグループで取り組めるように、エジプトの紋章入の封筒にセットされた教材を渡した。→【どのような学びも教師の本気のインプットから始まる】

 


古代エジプトの絵のパズルをし、その裏に隠れているメッセージを読み取る(ミニライトで光

 

 を当てると文字などが浮き上がるホログラム仕様になっている)。→【テクノロジー活用】
読み取ったメッセージから、机の下に隠れている資料を手に入れる。
資料はフィンランド語であるが、多くの単語は歴史特有の難解さがあり、生徒にとっては難易

 

度が高い。手元のスマホや一人1台のPCも使い、シークレットメッセージ(文字繋ぎ)を解

 


正解を先生に伝えると次の課題を渡される。→【グループの協働スキル育成】
この課題を解くと次のヒントがある場所がわかる
ヒントのある場所には絵とQRコードが貼られている。この日はカフェテリアの壁に貼られて 

 

いた。グループで相談しながらスクール探検をする。
QRコードを読み取ると10の古代エジプト文化質問に関する答えのヒントになるようなサイ

 

トが複数リンクされたページに辿り着く(個人のスマホは学習に何時でも使っている)。【この活動は情報のスキャニング育成】

 

答えと先に渡されていたワークシート、及び穴あきプレートとの関係性を考える【答えがない問いでもある。前時までの学習内容が関連する】(答えをワークシートの空所に縦に書き込み、プレートを載せて穴あき窓から見えている文字を並べ替えると意味のある言葉になる)【ヒエログリフの仕組みを事前学習で学んでいる。知識の活用スキル育成

 

出来上がった言葉を先生に伝えてOKが出たら次の課題(メッセージのデコーディング)が渡される。

 

学校の様々な場所に行って次のメッセージを手に入れる。そこにいる特定の人物に質問をする(例:校長室のセクレタリー等)。【異なるタイプの人とのコミュニケーション力:敬語や

 

依頼の表現】

 

戻ってきて先生に伝えると最後のワークシートを渡される。それを読み解いたら今日の課題達

 

成であ  る。【一連のプロジェクトの古代ピラミッドポートフォリオに作成:学びのプロ

 

セス】

 

授業の目標にたいして、自己評価にゆっくり時間をかけ、パフォーマンスの評価を行いWilmaICT評価システム)で保護者と共有する。【自己効力感の省察とメタ認知】

 

 

 

以下は、謎を解くための資料(フィンランド語)やヒエログリフなどの手作り教材の写真の一部である。Kaisu-Leena教諭の教材づくりの事前の深さと、児童がどのように考え、情報を組み合わせるかを予測した上での活動である。Kaisu-Leena先生によると、古代エジプトの文化は今日のEUの文化や考え方に結び付いており、考古学が解き明かそうとした道順やコミュニケーションツールであったヒエログリフの解読を、現代の方法で児童に経験をさせたいとのことでした。

 

 

 

 

 

写真はPDFを見てください。

 

 

 

各国では、教育へのICT活用は大切とされていますが、個人のスマホなどのタブレットを子供たちに持たせると、勝手にそれを使ってネットにつないだりして授業にならなくなるという声も聞きます。しかし、フィンランドではそれも含めて、小学校1年生から、スマホ・個人のiPad/または一人一台のPC を駆使することに馴れるよう、国家でICTスキル育成を支えています。W全国民がWifiを使えることは国民の権利となっています。授業では子供たちが真剣に課題に取り組み、スマホで遊ぶ暇などなく集中して活動していました。4,5人のグループで、必ず全員参加が出来るように仕組まれてかがアイディアを出すことによって課題解決が促進されることは確実なので、グループ内で働く者と働かない者が出るということがありません。大人でもやってみたくなる知的レベルの高い活動でした。11歳の児童が飽きずに、たまに体を動かしながら活動をして謎を解いていくことの学びは大きいと思われます。教師の準備は大変であるが、Kaisu-Leena教諭はこのような取り組みをいくつか開発し、同僚とWebで共有しています。

 

 

 

 

今、日本の教育は多くの課題をかかえており、一見一人では出来ないことが山積みです。しかし、誰かが一つ目の取り組みに着手して現状を前に進めていくことが必要です。その意義が、訪問した学生・院生に伝わっていれば嬉しいと思います。