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Sweden高校英語「ヘミングウェイ」文学の授業

n English lesson in Sweden:Hemingway
SwedenのウプサラNERA学会の折に訪れたSwedenの高校英語(ヘミングウエィの文学を使って)の授業は、とても理にかなっていて印象的でした。
 エッセイのあらすじ:
Ernest Hemingway's 1927 short story ”Hills Like White Elephants”
This is a poignant play about an American couple who have different expectations in life. She is expecting a child and he does not want to be a father. They are both waiting for a train to Madrid at a small train station somewhere between Barcelona and Madrid. The play centres about what each hopes would happen next ... the outcome is ambiguous ... in a way that can be set by the tone of the actor and actress, (二人で演じることができるスクリプトにもなっている)

3月7日午前、UppsalaのLundeliska Skolanの高校の英語を参観させていただきました。Carina先生は、高校とウプサラ大学の両方で教えておられ、私たち一行が到着するとすぐに、学校の概観と、英語で取り組んでいることについて話しながら、先生のスタッフルームに案内してくださいました。おしゃれなCoffee Roomです。ここで休憩したり教科の先生が打ち合わせをしたりしています。参観したのは、経済プログラム専攻の高校生で、クラスサイズ29人。Carina先生には以前にも学んだことがあるが、今日は久しぶりらしく、生徒らは「Carina先生、今日は何だろう?」と楽しみにしているようでした。Carina先生の授業は良く練られていて、自分でも指導法の本を読んだり大学で試したり、高校に応用したり工夫を続けていると言っておられました。他の先生方にも指導法を広めたいが、すぐには理解が得られないこと、教科横断の英語と他教科のコラボは大事だが、なかなか意識転換は大変であるとのことでした。

授業は、Ernest HemingwayのHills like White Elephantsという文学です。
リスニング教材は→
https://www.youtube.com/watch?v=jICtq_V7BTw
6分ほどです、是非聞いてみてください。

1)まず、その日の流れを示す、(5分)
Today
Listnen-Read
Discuss group of 3
If we have time, try jigsaw learning
70分の授業です。
Classicについて英語で話し、写真入りのPC画面で名前を全員呼び、文学にについて誰を知っているか聞きました。シェークスピア、スウィフト、など、パブの名前で知っているよね、ということで、ヘミングウェイ、生徒らは、あ~、となりました。次にテキストに何か所かアンダーラインをひかせ、後で分析するので、とのこと。生徒は英語で授業でも平気かというと、観察からは、やや緊張して聞き漏らすまいと、英語を聞いているようです。英語の先生はCarina先生のようにいつもほとんど英語で分かるように・・・でもないことが分かります。
2)文学を聞く(15分)
ワークシートを渡します(写真)。先生の手作りです。教材を作っては他の先生にも貸し出しているとのこと。ワークシートのNo.2を目視させ、あとで議論するので考えるようにと伝える。15分、音源を使い、Hills like White Elephantsを聞かせます。ここで驚いたのは、手元にスクリプトが配られていたことでした。音声だけで理解するわけではないようです。生徒は音声と原文を照らし合わせ、理解しようとしていました。3名ほどがついていけないのか、顔を落としていたのですが、(彼らは授業の最後には議論にのっていきました)。この原文は、同じような会話の繰り返しの部分が面白く、心理描写や比喩のところはついていけない生徒も、会話のところでは大丈夫で、文学教材でありながら、高校生でも「あ~、あるな。こういうこと」という部分を含んでいます。若い女性と男性が、互いに違う思いで、White Elephantsと比喩しながら、すれちがいの問答を繰り返していきます。Abortionのこともテーマなのですが、聞いているだけでは、その背景は全くわからないのが、ヘミングウエィです(Mnimalist)。イマジネーションを引き出し、「え?これどういう会話」と考えていました。たとえば、 I want you do what you want to do. I don't want you do what you don't want to do.などという、やや無責任に聞こえる男性のセリフは4回ぐらい出てきます。これには笑ってしまいます。相手にゆだねて自分はあまり関わりなくないような。女性は、男性の本意をたしかめるように、Beerも飲みながら、聞き出そうとしたり、確かめようとしたり。これは、高校生でなくても、誰もが、駅のようなすれ違いの場所で、会話を続けながらも、おたがい結局核心には触れることが出来ない、もどかしさの、会話が続きます。これなら生徒が文学でもついてくる・・と、先生の教材選択眼が光っていました。本物なのに、「ここ分かる!」が生徒をついてこさせます。日本ではこのあたりは、教師の文学再話力がやや必要かも知れません。原文でついていける高校はまだ少ないです。
3)少人数で議論(15分)
ワークシートのNo2の質問について少し解説し、まず、3人で話合わせます。物語のプロットや視点などです。What can you find about~~?
1 セッティング
2 プロット
3 登場人物
4 シンボル
5 タイトル
6 どういう視点で書かれているか
7 作品のバックグラウンド
8 中心となるテーマに、このセッティングは適しているか。
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1-Setting-where and when is it set?Psychological setting?
2-Plot-what is really happening here? What are they discussing?
3-Characters-how are they portrayed?
4-Themes-what theme/-s can you find in this story
(Love, hate, revenge, etc.)
5-Title- waht symbols can you find in the text?
6-From what point of view is the story told?
7-Since the story offers so little information bout the background and apprerance of the characters, discuss the importance of the few that are provided.
8-Go back to 1) and look at your answer on the setting. Why is the seting to appropriate for the main theme?
などの質問です。話し合いながら、質問についてAgreeかDisagreeか問い直したり、登場人物は何について話をしているのか? あ、その分析はいいね。彼らはどれぐらい若いと思うか? 自殺したいと思っているのではないか?とか、生徒の意見にその場で、フィードバックしながら、出来る限り、文学の原文にうまくもどって、どこからそう読めるのか?と質疑をしていました。
29人の生徒たちの手をあげたり、意見を述べたりしているのを、メモにプロットしていると、半数以上は意見を述べていましたし、真ん中あたりの生徒が、おそらくUSAか海外にルーツを持つ生徒なのか、作品の時代背景について触れました。その彼の意見に、まわりのものが、なるほど、と。ややRespectしているのが、面白かったです。先生はそのつぶやきを上手く全体に返していました。全体討議では、生徒は英語に自信があると答えやすいようでしたが、「言いたい」ので、上手くいえなくても話し出す様子も見られました。これが、「考える」授業には出てきます。

3人グループでは、シャイな生徒も遠慮なく話し合っていました。英語はあまり長い文章では話せない様子や、高校生特有の、明確には意見を言わず、うまくはぐらかして、同意を得る・・・という様子もありました。それも含めて、手元の原文に、「あれ、でもこう書いてるし」と文学と関連させていったりきたりしていました。
ヘミングウエィは旅好きで、スペインにも旅をしているので、Two Beersが Dos Cervezasとして会話に出てくるところや、メタファーっぽいところ、などが出ていました。Carina先生は、小グループのときも、どの生徒を上手く励ますか温かい目で入り込んでいました。
4)ジグソー法で、グループ入れ替え,グループの分析をほかの人に伝える(15分)
次に、グループを組み換え、自分のグループで話し合ったことを、大きな3~4ぐらいのグループになって、自分の班で出た意見をサマリーして、述べ合う段階です。自分のグループで出た意見をそのまま言ってもいいのですが、皆、意外と覚えていません。自分の意見を英語で言うのに必死でしたから。それで良いと思います。仕方なく自分の意見を代用していましたが、これ、俺の意見やねん・・などと言っていました。メモをあまりとらない様子でした。(フィンランドの生徒の場合は聞き上手に育っており、グループサマリーをさっとまとめるのに小さいころから慣れています)。先生は、3人グループでの意見を伝えるのも、大事なポイントだと励ましていました。大きなグループに組み替えると10人近いので、発言はかなり一部に偏りましたが、No2について、話し合いは進んでいきました。先生は、3人から10人に組み替える時に、だれもが納得する形で組み替えながらも、人数が合わない場合は、うまく、闊達な意見を述べていた生徒を、3グループに配置していきました。このへんも、ベテランです。
ジグソーでは、次の4つをポイントにしていました。

Do you agree with the author about her analysis?
Is the story really about what this analysis claims?
Can you find any proof in the text for this inerpretation ( in the analysis given)?
Can you give any proof for your own analysis?(Quotes)

つぎは、もう一度テキストを読み自分のレポートにする。

ーーーーー文学を扱うという点では、生徒は最初はヘミングウェイは難しいと思ったのに、話し合っているうちに、分析を楽しめることに、高校生らしい知的興奮をもって臨んだと思います。文学のAuthenticityの力も感じました。やはり本物は強い。e-mailの書き方・・・などの、テキストにありがちな疑似的なトピックとは根本から違います。友達にでも、あれ?そう書いてないよ?と言われ、また原文を読んで解釈する姿が多く見られました。
ーーーーーグループ学習をさせる上での、ファシリテーションの際の、先生のQuestionsが、良かったです。分析の鋭い生徒には、さらなる分析になるような質問に変えていました。

Sweden語は英語にかなり似ており、文構造はほぼ同じですので、語彙の入れ替えが分かるとそれほど苦労はありません。語源が全く異なるFinland語に比べると、英語は比較的指導法の工夫をしなくても、成功しやすいと言われます。ストックホルムのHelena先生に聞くと英語教育は、成功していると思われているので、逆に、CLILのように、本物のContentを使って「考える」授業は全く学校に浸透しないと言っていました。(CLILは言語教育の成功だけが狙いではないが、評価システムが厳しいSwedenでは、教師は授業の工夫に時間をかける余裕や意欲にはならないとのことです。教科の先生はCLILをするが、英語の先生がCLILをするのは稀であるとのことです)。それでも、英語は仕事にも必須で、親も英語は高いレベルに達するように気にかけているとのことです。日常会話レベルでなく、アカデミック言語、議論など複雑な使用が期待されます。しかし、それに反して多くの英語の授業は日常会話的であることが課題だと言われていました。生徒のディスカッションを聞いていると、生徒間には、相当な差があることは見て取れました。一見、闊達な議論ができているようですが、会話のイニシアティブが握れるのは、3分の1ぐらいでした。しかし、この授業にはしっかり引き込まれ、どの生徒も、聞いて読み、意見を書いて言おうとする。そういう姿がみられました。Swedenの教育制度の中にあっても、一人のEducational Leaderとして学校の言語教育を牽引し、最大限の授業工夫を進める姿がそこにありました。英米文学を活用したCLILであるとも言える授業でした。
 ここでは詳しく述べませんが、同じスカンジナビアでも、フィンランドとは対照的な教育制度の課題が見られ、Swedenは、PISAでも上位には出てきません。Swedenは制度と結果の間でやや揺れていると言えるでしょう。国の事情はどうであっても、目の前の生徒と学校をしっかり導くという先生に出合えた半日でした。コーディネート下さったのは日本からSwedenに研究に来られているウプサラ大学在外研究の方です。比較教育学という分野を初めて目の当たりにしました。興味を持ったので文献を少し読んでみましたが、大事な視点だと感じます。私たちは、一人の教師と授業という、閉じられた空間で考えがちですが、それを取り巻く、キュービック的3D思考が、教育行政には必須です。行政や予算が変わらねば、学校に良い変革はできないです。
この先生との出会いも研究者の手作りの出会いであったということが分かりました。他にも学校経営の専門の方、教育経済専門の方、教育学の方と、それぞれの視点から、Swedenと日本の教育事情に思いを馳せて観察をされたと思います。英語としては、わたしの周りには、英語使用のレベルは違っても、このような取り組みをされている先生は出てきていますし、日本の英語授業も随分変わってきていると思います。短所長所比較はしませんが、高校生の考える様子というのは、どの国も、機会さえ創られれば似ているといえそうです。そして、日本の高校生にはスキャフォルディングを準備して、生徒の潜在力を引き出すように取り組みたいものです。