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イギリスの学校(4)-算数の解き方を考える

 

イギリスの公立小学校「算数」

 

 20191月、Ashbrook Schoolに二日間訪問の機会を得た。ロンドンから電車で30分ほど、地図上では、左はオックスフォード大学、右はケンブリッジ大学の真ん中に位置し、モダンな郊外の町で、住民は比較的豊かであると言える。この前日は私立の小学校を見学したが、公立の方が予算は厳しそうであったが、国の学習指導要領の新しい枠組みは良く取り入れている。予算は厳しいと言っても、日本に比較すると、ふんだんにある絵本や各教室からすぐに集まれるオープンスペース、教室のカラフルな掲示等、消耗品が削られるということでは無さそうであった。3年生以上は別の敷地にあるので、高学年の理科室や家庭科室がどのようになっているかは、今回は見ていないが、理科室はあまり充実してないと聞く。これは、現在まで訪ねたEUの国で概ね同じである。

 

 1時間目は午前9時頃からでYear 267歳)の算数と国語(英語)を参観させてもらった。どのクラスも、「今日はどんな日?」と自分を見つめるよう、先生は一人ひとりと対話をしていく。友達の話を互いによく聞いている。「もうすぐ人気作家のサインをもらえるのが楽しみ」とか、「家族の誕生日まであと何日だから嬉しい」とか子供たちは結構長いお話を語ることができる。

 

 算数では、ICTボードで、53+24などの足し算の解き方を問い、子供に一つの白板を持ち、マーカーで図を描いている。様々な解き方が合ってよい。線分図や、1を〇に見立てる、10を山に見立てるなど、色々あるが、3人ぐらい前に出て、どのように解いたかしっかりと言葉で表現させる。次の繰り上がりにいく際には、10のかたまりを意識させ、先ほどの問題と何が似ているかと、何が違うかと比べさせる。What did you do? What did we do at the first---? What is similar? What is different?と問いかける。10の位が増える場合の分量を視覚的に図に描いて示す。子供は机を5~6合わせて使っているが、机の上には、子供に合わせたお助けツールが置かれている。100マス表もあれば、数の物差しもある。先生はベテランで、週の後半このクラスで教えておられ、前半担当も経験深い先生で、よいチームワークであるようだ。全体には、次のことが言える。

 

・子供とやりとりをしながらの、板書 ・29人ほどの生徒の一人ひとりを掴んでの指名

 

・子供が考えた内容を取り上げてOHCに映し共有する ・個の指導が日常化できている。

 

 

 

個々の課題に合わせて、後半の計算応用では、一桁の足し算に課題がある子供らを、良い雰囲気でカーペットの前で座らせ、短冊に書いた計算を選ばせている。他の子供から見て特別指導を受けているのだなという印象にならないような温かい配慮である。アシスタントティーチャー(ATと記す)が1名おり、全体指導で課題が見られる子供に中心に指導している。この先生は特別支援の先生ではなく、全体の補助をする。イギリスには教科書はなく、学習指導要領をよく読み、先生らがカリキュラムを開発し教材を作成している。ICTの問題の出し方も、前半の25分ぐらいのインストラクションとマッチして、難易度を上げている。12問ほどの問題について、図を描いて答えを出している。残り5分ぐらいで、文章の問題を見せた。

 

Sam has 37 marbles and the needs 42 to fill the jar. How many more materials does Sam need?

 

→37+◇  = 42 の◇を求める式になるのだが、まず子供らとやりとりして、子供の考えからこの式を導いていく。37から山を5つ描くと、42になる視覚を使う。How many more?と問、次の時間は、missing numberをするよと、予告をしていた。23人について、先生は概ね4段階ぐらいで把握しておられ、違う指導やツールを用意していた。時間中に、12問の問題については、到達をみて、チェックやフィードバックを済ませていた。

 

(感想:最初のインストラクションは、比較的、日本の経験の深い先生の授業に似ている。しかし、子供の表現をしっかり引き出して考え方を言わせること、子供がそれを言えるようになっていること、個に応じた指導(DI)について研修を踏まえておられると感じた。イギリスは評価制度が厳しく、生徒の到達度をかなり細かく把握しており、この授業以外でも、子供の名簿表に、マークや評価をして記録している姿が印象的であった。)