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イギリスの学校(2)ーストーリー創作への梯子

 

10時10分(リテラシー指導)

 

Year2Guided Readingの時間がはじまった。今日のメインのグループ7人は、共有スペースの机に先生を囲んで座る、グループごとに段階に合った同じ本を持っている。1グループの取り出し「メイン指導」は20分ぐらいである。算数と同じベテランの先生で、この先生は必ず最初に前時までの内容を思い出させ、次のインストラクションをしていく。生徒がリーディングの心の準備ができてから、グループに放している。大きく5つにグループが分かれていて、輪番でこのメイン指導がまわってくるようだ。

 

1つ: Pre-readingのグループ 

 

2つ:お話に関するプリントをするグループ (かっこに当てはまる語彙を入れるなど)

 

3つ:グレーデッドリーディングのグループ Crocodile Farmsを読んでいた。巻末のQ&Aをしている。

 

4つ:Comorehensionの力を養うアクティビティを行うグループ

 

5つ:先生のメイン指導のGuided reading 

 

 

メインの指導では、先生は自然な形で、7人に指名しながら部分読みをさせ、「文字読み」「内容」「フィクションかノンフィクションか区別しているか」「ORTの最後の質問に答えさせる」などの手法を用いる。

 

T What did it say?   What is invisible?   Look at this page. Did you find a difference  などと聞いている。同時にルーブリックの「到達度」を見て取り、後で評価表に記録している様子だった。

 

生徒らが手にしている本の内容を生かした、「宇宙」のプロジェクトが、教室掲示にもいかされていた。高学年のように、惑星の順番を教え込むとかがねらいではない。Living in Space など宇宙や星の本を何冊か読んでいて、出ている登場人物としての惑星を、壁面に位置付けている。学んでいる途中の様子を共有できるように、壁面を使っていることが多い。コッツオルズ小学校訪問の時は、この壁面を担当するアシスタントがいて、担任の先生はインストラクション専門であると言っていた。この学校では、半期ごとに教室とオープンスペースの掲示が変わり、テーマに沿って担任が支持をしてTAが提示しているそうです。先生は黒板も、ICTもOHCも壁面の掲示もふんだんに使って、理解のサポートをしていました。

 

 

11時00分

 

先生は一人の生徒のノートを、OHCに映し出して、皆に読んで聞かせた。As usual Lucy cleaned the moon. She soon ---. She jumpedand went back to the planet when—-. と生徒は綴っている。(この生徒の創作:ルーシーはお月さまの表面を掃除をしていると、すぐに~~で、ジャンプして~したあと、もとの惑星に戻った。)一人ひとり面白い筋を考えている。さすがハリーポッターの作者を生み出す国である。

 

 

皆それぞれに、宇宙の絵本を何冊か読み込んだあと、「自分の宇宙の物語」を創作している。創作させっぱなしではなく、このように、ほかの話を読み聞かせて肉付けをしたり、進んできた生徒の文章を見せたりして、「グリーン」に先生が下線を引いたところは、形容詞を上手く使っているところだと示していた。例 adjective: graceful  conjunction: then, after

 

壁面には、when and とかキーワードを掲示していて、Year 2の学習指導要領には、接続詞や形容詞を使って物語を創造して書く。その際に話を繋ぐという「スキル」が見につくようにしているだと、思われる。つまり、形容詞や接続詞、また生徒が使いたくなるような表現を、学級皆でやり取りをしながら、文脈のなかで、「文構造」「文の機能」に注意を向けていく方法である。

 

 

ここまで読んでくださった方で、小学校の国語を教えられたことがある方は、「あれ、似ているな」と思われるのではないだろうか。『ごんぎつね』で、ごんが兵十の影を踏みふみあとについていく、そんな文脈の中での前後関係や文のつながりに、注意を向けさせ、また文脈に戻る。ただ、違いは、日本では「ゴンの気持ちは?」という指導で終わることが多く、物語の創作やプロットにはあまり指導が行かない。21世紀型スキルでいう「読む」「書く」に向けては日本の国語も、創造性を育てるための、「書く鋳型」「パラグラフ」などを意識させ、それを転移する、応用するという指導が重要だ。(話がそれました)。

 

このような指導は、実はESLEFLの授業でも可能である。特に中2~高校は、こういうことが出来るし、その中での、文法やコロケーションを教え、使うように強調しながら、また文脈に戻る。同時に似たテーマの本を多読させる等。しかし日本の英語の授業では、文法は切り離して教えている光景や、せっかくの文学作品だが、ばらばらにして、語彙と文法の実という指導は良く見られる。某日本の中学校教科書では、ピーターラビットが取り上げられており、読み込めば、イギリスの歴史にも触れら、ほかのシリーズを紹介するきっかけにもなる。2020年学習指導要領では、明確に「文法は文脈から切り離さず」と記されるようになった。意味と文構造は、互いに行ったりは可能であり、これを機に改善したいものである。

 さて、生徒らは、「ストーリーライン」のプリント(自分で話の計画をねった図入りのもの)を見ながら、後半、お話を書いていく。30人ほどは、よく集中してどの子も創作している。この先生は、教室にも机にも、梯子になるお助けを十分用意している。壁面には宇宙のこと、接続詞をつかるための掲示 句読点 (, . ?)などの掲示。形容詞や動詞のバリエーションTime Wordsとして(First, Then, Next, Later, Soon, After, Lastly)等をラミネートしたものを、机の上に。子供は自分の作ったスクラップ単語帳を持っている。

 

子どもが学びに向かうように、あらゆる面から支えている。

 次にもう一人の子供の例を映し出して、皆で楽しく読み、じゃ、次に何ていうだろう?と問いかけながら、学級全体の子供に意見を言わせながら、接続詞をひきだしたりする場面が実に良かった。この共有がないと、次の話がどうしても創作が薄くなってしまう。よく分かっている先生である。

 

 

Finally they got home and had a steamy, hot cup of tea. They both felt tired and exhausted because they had been having such a ・・・ Michell said " I had such a fun day today" Olivia replied “I wish we could go back another day. “

 

この創作をスクリーンに映し先生が書き加えていく、生徒に意見を言わせながら a steamy, hot cup of tea などと、動作も交えながら、いい表現だねと、褒めていく。次にまた習う、直接話法の、会話文もそれとなく使っていく。

 

(ここは、日本でも国語でも、中学校英語でも出来ないことはない。出来る先生はおられる。しかし、40人学級ではだいぶしんどい。後ろの生徒には文字が見えず、しゅっと丸くなるぐらいでないと、こういう指導は集中できない生徒がでて、行き届かないものである。せめて30人学級でないと。まして慣れない英語はもっとである。)

 

 

今日書いたところまでを一度友達に読んであげてから、先生に出す。自分で間違いに気づく子も多い。先生はそれに添削をするが、一つ一つミスに赤ペンを入れるのではなく、「それから?」とか「これいいねに、Greenの線」とかである。ノートは全て学校預かりである。

 

 

残りの3分は、先生が書棚から本をだしてきた。ライミングが特徴的な本で、音声だけで聞かせて、子供たちも声でおいかけている。最後にさっと挿絵を見せたら、子供らは音声で想像していたのと、ちょっと違ったのであろう。「わ~」と驚いていた。子供らは頭の中で、聞いた英語の音声を、イメージにしているのだということがよく分かる(SLAではForm-meaning ConnectionFMCsと呼ぶ)。先生はそれが大事だと思っているから、先に挿絵を見せていない。このFMCsができるような時間を、「言葉」の授業では大半を占めるようにしていかないと、素地にはならないのだ。

 

 子供たちのノートや壁面、先生が自分で書かれた、リテリング、最初のストーリーライン(絵)、そして子供に少しずつ渡していき、今度は子供が、ブレーンストーミングや、キャラクター創作、形容詞や接続詞の学習も挟んで、つけたいスキルも意識して、自分の「宇宙の話」を書いていく。授業中の前半25分は、子供とやりとりして、一緒に考える時間をとり、後半20分を、フィードバックと、時間中に集中させて創作する。梯子になる活動と教材が、壁面にも机の上にも子供のノートにもあるようにして、耕していた。また、国語としての英語の授業だけでなく、工作や、モノづくり、の授業でも、ストーリーラインや手順を描いている。小学校ならではの教科横断プロジェクトである。