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良い組織とは?

海外に居ても、数々の書類をこなしながらの毎日である。フィンランドにていも寝る以外の時間PCで書類のTo do listを消している近頃である。学会からの編集依頼、出版会社から、数十ページにわたる依頼も来る。こちらから出版に向けて依頼した原稿の校正を海外便でも送ってくださることもある。やっぱり頑張って応えるしかない。その前後の事情からは、とてもお断りは出来ないという状況に悩む。

 

さて、大学という組織は、小学校~高校やキュービクル式の会社Officeに比べると、もっともお互いに何に取り組んでいるか見えにくい場所だ。それはもう、一日、驚くほど多忙スケジュールで回っていても、たとえば今から例えば1時間、学校関係の方が来られて相談に乗っている間は、なかなか暇そうに見えるに違いない。もちろん一生懸命話を聞こうとしているのだから、ほかのことは全ておきそこに居てお茶でもどうですか?とお出ししていると、暇そうである。このような組織では、誰がいつどのぐらい疲弊していても、これはまた看過されやすい。見えない組織だからである。最近は、国立大学には再編や予算削減が押し寄せ、政府の方針とは言え、単年度ごとの取り組みやその評価の書類が山のように押し寄せる。行政はこういう評価の書類で責めることが、結局、「教える」「研究する」という本来の仕事をどのぐらい圧迫するのか、なかなかお分かりにならないようだ。少なくとも当事者である教員は、やるべきことに時間をかけ、互いに良さを尊敬しあって協働したいものである。しかし、なかなかそうはいかない。例えば、Free ride(ただ乗り)をする人が組織にいるとどのようなことが起こるか。これは、パワハラなどに比べると見えにくい、Free rideしていることを意識していない人もいる。自身も周りにも分かりにくいので見過ごされてしまう。まあ、いいやと気にしなければOKだろうか。現代社会の組織(とくに沈滞している組織では)はフリーライドの粘土層が分厚くなる傾向があると言われる。Free rideの定義は、社会学的には、「『経済的・時間的・労力的なコスト(費用)を支払わずに、社会政治システムの恩恵だけを受け取ろうとする人』」である。「近代における市民社会の社会秩序は、個人の思想や行動の自由、個人の自発的な社会参加・協力行動、個人の自己決定と対話(交渉)による合意によって形成される」のだが、Free rideは、この秩序を崩してしまうというリスクを持つ。努力をしても報われないなら、努力する必要を感じなくなる組織へと、崩れていくからである。このタイプは対話や交渉を避けると言われ、組織も影響を受けてそうなりやすい。組織が前に進んでいる場合は、あまり気にかけなくても良いと思われるが、沈滞している場合はこれが原因か考えた方が良いという。上席にこの傾向があると、社員はプロセスが評価されず、結果も持っていかれるため、社員はやる気を失う。またFree rideは自分では行動を起こさない、自分からは仕事を探さないので、責任を回避する。そのため、危機に面すると人のせいにすることもある。自分で考え行動を起こす経験がないからである。交渉や対話をしないと、「前もって対応していたら小さい間に解決できた些細なこと」が、大問題になってしまう。すべてが後手となって皆が疲弊する。しかし、自分が対話を避けたことが原因だとは気づいていない。こういう空気になると、社員はそれぞれに別のことをしてればよく、Free rideがいる部署では部下もFree rideになりやすい。もともとFree rideでなくても上司のそういう働き方を見ていると、そうなる傾向がある。それが蔓延した組織は進まない。やる気のある人は離職も考える。一方。共に時間を過ごし一緒にやらなければならない仕事の人たちには、これは起こりにくいという。なぜなら、誰が今なにをやっているかが分かりやすいから、互いの目やFree Rideを良しとしない健全な空気が生まれるからだ。しかし、現代ではそういう組織は減り、机に座っていてもPCに向かって何をしているかは見えにくく、チーム感はないという。Free rideは自分がそうだという意識がないので、直に相手に感謝したり、Rideしたことを相手に伝えることもなく。誠実に交渉することを避ける。「見えない組織」ではこれも皆には見えないので許容される。社会学では、Free rideが増えた組織は、どのように改善出来るのか提案をしているが、良い回答はない。難しい問いである。自分が何日も案を練り、実現可能に向けて事前交渉し、精力かけて作った計画書に、Free rideする上司がいたとする。それも音もなくいつの間にか。あなたなら黙って我慢するだろうか。私なら、そのようなことがまかり通る組織は、もう頼らないことにするだろう。今のところ、私は、交渉や対話を遠慮なくできる環境のもと風通しが良い。計画した内容が良ければGoサインを出してくれる。気軽にドアをノックして、相談に来られたり行ったりする。こうなると組織は進みやすいし笑顔がうまれる。今、チーム学校といわれるが、学校はもともと良いチームである。長年私が勤めた学校は4つあるが、素晴らしいチームであった。たまにFree rideもいるが少ないし、皆から認められない。互いに見えるから、誰が仕事をしているか互いに理解しているからである。教育委員会時代は、死ぬほど仕事をしたが、Free ride など一人もいない潔い豪傑先生が集うチームであった。今、良いチームを作るべきは大学組織であろうと、改めて感じた一日であった。