フィンランドの早期英語教育が小1からになることについて所感
―フィンランドにおける早期英語教育 - ジェンダーの違いと類似点に関する調査結果―
フィンランドでは、2020年1月から、遅くとも第1学期の春学期には小学校1年生からL2としての英語教育が開始されます。これについて、私は数人の研究者や書かれた最新論文を読んでみました。調査は大規模に行われ、S先生やH教授なども非常にそのプロジェクトに大きく関わっておられます。以下は発表された論文ですから大丈夫かと思いますので紹介します。私が、「フィンランドは母語教育が充実していることが英語教育の肯定的な成功に役立っていると聞いていますが、2年繰り下げることで、どのような結果が期待されるか?」と聞きます。他にもこれに対するサポートプログラムを動かしておられるのでそれについても聞きます。フィンランドの研究所では、カフェタイムがあるのですが、そのような時間はリラックスになるので、美味しいものとか流行りのクイズとかしか話題に上りません。ふだんの会話では核心に触れないのは、日本と似ています。ですので、自分から面接を申し込んで40分ぐらいとってもらい色々教えてもらい、あとは論文を読みます。しかし、英語の1年生開始は、フィンランドの問題なのであまり、私に語られることが無いなという直感があり、フィンランドの語の2018年の論文を、グーグル翻訳を使って、片っ端から読んでみました。たくさんの議論がなされています。主にまとめると、
子どもたちは(生徒)、最初の6年間で学んだ語学力の種類をどのように、外国語の方向づけにもっていくか、その際の態度を勉強にどのように影響させていくかの検討についてです。
全体に、グラフでは 女子の方が男子より「英語が理解できる」「好き」「頑張りたい」となっています(例:英語が好きは、男子3.18 /女3.3)。4件法なのでまずまずでしょうか。男子の方が低いのですが(理解も)、この原因が興味深いです。ゲームに使う時間が男子が多いことが挙げられています。しかし、学校以外の余暇の時間(家族と過ごしたり、遊びにいったり)に英語を使うは、男子の方が高いのです。研究者はこう分析しています(Jensen,2017等)。男子は自分がまだそれほど英語が上手く使えないことを知っていて、それを学校で上手く使うということには自信がない。しかし、興味のある場所や目的ではやりたいと思っているということでした。また、指摘としては、かれらの初期の肯定的な動機を、6年間にしっかり受け取り繋がないと上手く行かないと述べています。
フィンランド政府は、★「初期の語学教育は、とりわけ、言語学習の不平等を軽減し、男女平等を支援することを目指しています。フィンランド教育は、生徒の言語のアイデンティティと、長期の語学学習に対する生徒の関与をサポートします。」★ (2018)ということです。
つまり、これらのデータに基づき、学校で行われる言語教育と、英語を実際に使いたくなる社会の文脈の「距離を縮める」!(そのような教育を今回の改訂で目指していると私は捉えます)。H教授の研究では、男の子たちは、彼らがすでに英語をよく知っていると感じていて。初期の英語教育では、学校で教えられる言語と子供の日常生活との距離を縮めることを目的とした、テーマの選択を行い、毎日触れるときの良さを最大限に持っていくことが大事だということです。
☆初期の語学学習の普及は、後の語学学習にも大きな影響を与える可能性があり、より永続的なコミットメントをサポートし、意味のある学習を行い、良さを感じるよう動機づけるということが大事だと述べています。☆
これは、昨日のCumminsの講演でも述べられていましたが、日本でも既に言われているように「Younger is (not)
better」であることは、SLAで研究されてきました。短絡的に早く始めれば良いと、主張する人はもうあまりないかと思います。しかし、いくつかのPartで優位性があり(音韻や音声の面、動機づけ等)、また、遅く始めた方が優位な面も別途研究されています。Cummins氏は、早期に行う英語の指導法は、その発達段階ならではものでなければ、意味がないと述べていましたが、私はこれに、大賛成です。従来の中学生の真似をして教えるなら、そこには、科学的根拠はありませんし、効果はないでしょう。
一方、フィンランドの学校訪問を重ねてみた様子からは、これに対する十分な準備が進んでいるわけではありません。多くの先生方がA1~B1ぐらいの英語使用については苦労がないので、日本と事情は違いますが、小学校1~2年生で何をすべきかを理解している教員はまだまだ少ないようですし、研修もこれからのようです。そのプロジェクト展開で多忙な本研究所の研究者たちの様子をこのようにして見せていただける幸運に感謝するばかりです。
フィンランドでは大人の半分ぐらいが上手く英語を使うので(長年の教育の成果です)、余暇に英語を聞くということは高学年ほど生活と繋がっていくようです。しかし、50代以上の大人の方の英語は、その当時の教育を反映しますのでまちまちです。フィンランドのバイリンガル状況(同時にグローバルリテラシー)はやはりフィンランド教育の賜物であるのですが(→この点は、別に調査をしてみたので、またいずれまとめます。これも膨大になりました。まだ答えは出ませんが。)。
それにしても、余談ですが、未だに一つも単語が分からないフィンランド語の論文を、95%ぐらいは訳してくれるGoogle翻訳には、驚くばかりです。【フィンランド語⇔英語】 が、質が高いですが、【フィンランド語⇔日本語】は、まだ相当、変です。(要注意)。しかし、これがなかったら、わたしのフィンランド研究の最新事情(特に2018年研究は、英語では出ていない)は出来ない感じさえしています。つまり【フィランド語⇔英語】をまず読みこなし、ニュアンスが合っているかを、日本語でちょっと補足、それでも分からない部分はありますが、大抵「要約」(英語)とデータ(分析グラフの数字)を解釈すれば、間違いはあまりありません。
日本では、Google翻訳があるので、大学の英語は・・・という議論がおこっているとすれば、この点については私は否です。むしろ各国で起こっている世界情勢を読み、他国の人と交流し日本にも役立てるには、さらなる、世界の文脈を理解する最低限の英語を身につけ、Google翻訳も駆使した上での、深く広い言語理解を育てる必要があると思っています。
参考:以下は、赤が男子のコンピュータゲームに関する好意感です。青が女子です。