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ユバスキュラ市内小学校 Leena先生の国語(フィンランド語)の授業

授業の目当ては、Functional Learningで、グループでLeena先生が出すCueを読み、協力して生きた語彙を学びながら、母語における文法の特徴に気づかせていきます。示唆に富む授業で、「School Race」と名付けられたロング(2時間)の取り組みです。日本の一般的な手法との決定的な異なりは、1)Functional Learning(FL)の明確な位置づけ 2)10歳でも自分がグループにどう貢献できているかについて12の観点で自己評価をよく話し合う場面、3)タブレットを文房具のように使いこなしRaceのリポートをする、4)WILMAというWEB上での家庭とのデジタル連絡でFLを高める(Red Circle-Orange Circle-Green Circleと高めていく) 5)母語のフィンランドの言語機能に活動を通して気づかせ、最後に文法の特徴を把握させる。です。また先生が、自分が取り組んでいる学習形態の価値をよく把握され、見学にきていたドイツの校長先生方に英語でコツを説明しながらも(子供にはフィンランド語)、38人の生徒の質問やファシリテーションを的確にされ、School Raceの進行も、Ongoingのフィードバックもマネージメントもこなすという、グローバル教師としての自然な姿でした。特にこの日のために用意するのでなく、9月からでも既に7種類以上のFLを進めておられ、生徒らは、どの授業も最高に楽しかったところに〇をしています。Leena先生は、英語の先生でなくホームルームの先生ですが、英語専科となられても全く大丈夫な様子です。(英語専科は別におられる)。

「School Race」の進め方(これは工夫するとL2の英語でも出来ますし、理科や生物の観察、健康チェックなど、様々な学びに活用できます)→詳細

amazing raceという学びを応用した授業のあり方です。フィンランドの授業を観察していて感じるのは、学習指導要領に迫っていくために、数々の先生が生み出した指導に楽しいプロジェクト名がついていることです。たとえば「いじめ」を傍観しない(無くすという発想をあまりしない)プロジェクトにKIVA(キバ)プログラムがあります。このSchool Raceは日本の先生ならすぐに気づくと思います。「あ、やったことある、スクールトリップ(学校探検)?」そうなんです。様々な楽しい課題をグループごとに解決させていきます。似ているのですが、Leena先生は、このプログラムで何を達成させたいかをはっきり持っていました。グループスキルと、言葉への気づき力です。母語であるから完全に話せるわけではありません。母語にある規則や言葉のつながりを探検させながら、協力して見つけさせていきました。これは英語でも、人命救助プログラムでも、理科でも活用すると言っていました。簡単な流れは1)活動のねらい2)グルーピング(活動によって臨機)3)先生が用意したオレンジのカードに「問」が書いてあります。まず、スクールに関係ある単語がたくさん並んだカードをグループでABC順に並べます。国語のフィンランド語でも結構子供は四苦八苦、1+1+1+1で足し算になっているグループは早い。30分かかるグループも。でも助けません。次に、「?」カードで、「校長先生に挨拶をしようと思ったらどうする?」と書いてあります。子供たちは教室から飛び出しました。4種類以上あるのでどれが当たるかはわかりません。「〇〇というスポーツ選手の道具を探すには?」運動靴に履き替えて子供らは走っていきました。運動場に出ると、多くの学年が、スポーツオリエンなどの言語活動をしていました。おもしろいことに久しぶりの晴れだったので、多くの学年で〇〇レースが教科にちなんで行われていたようです。一つのグループについていくと、校長先生は留守だったのですが扉にカードがあって、読んでいました。子供らは自分のiphone パソコン1を個人もちで、到達場所で写真を撮ったり歌を歌ったりしてレポートします。カードはだんだん難しくなります。帰ってくると、間違いのスペルが入っているカードがあって、グループで探します。次にまた外へ出かける「問」です。最後は、分かち書きに関するクイズ、母語にしかない文法を上手く見つけたら当てはめて書けるカードです。先にそちらを教えるのではなく、事例からルールへと誘う母語の授業でもありました。早くできたグループはハイタッチして喜んでいました。子供は「次に何するの?」とはたずねません。自己のPCを出して今作っているストーリーブックにとりかかりました。年間6冊の本をよく読み、自分のストーリーを作るロングプロジェクトが個人に任されています。まだの第1段階のグループは全くあきらめず頑張っています。先生はどの子供がどのように協力しているかよく見ています。そうこうするとドイツからの視察グループ(校長先生たち)が20人ほど入って来られました。PC環境など見ています。先生は、そのグループに、合間合間に学習の意図などを説明したり議論したりしていました(英語)。しかし、子供がすっと帰ってきたら、いち早く子供らに目を注ぎ的確なファシリテーションをしていました。実によく子供をみています。ランチはそのグループでカフェテリアに食べにいき、13時に集合となりました。ここでは先生は自作の自己評価シートを見せてくれました。この活動で友達の良さを見つけられたか。自分の役割を果たせたか。皆おなじぐらい以上力を出せたか?などです。季節に2回ぐらいの評価シートで、今日は久しぶりのようすです。毎回はしません。毎回は声でのその場のフィードバックを大事にしています(Ongoingであることが大事)。シートを渡す前に、先生は子供らと十分なやりとりや意見を言わせてからとりくみました。ここは大切です、自己評価をする前に、この学びで何を見つけたか内容について深めました。上に点々・・がついたaaが二つ並ぶ発音は子供らでも難しい母音だそうだ(私はまだ出来ない)。見ると8個程度のこの秋に行ったプロジェクトが書いてあります。すべて先生たちの編み出した計画とのことでした。私にも、Parentsとの評価のやりとりをするアプリを見せて、どう使うか話してくれました。Leena先生、一人で3人前同時に仕事していました。これはWILMAというアプリですが、グリーンCircle オレンジCircle レッドCircleを使っています。もう一人でどのようなグループでも協力して意見を述べたりできるとグリーンCircleなのですが、すべての教科をParentsは家から見れるようになっています。いくつかの教科でまだオレンジという子供もいて、親は自分の子供のグループスキルがグリーンに伸びるように一緒に協力をされるようです。その横には、細かいコメントがたくさんタイプしてありました。気づいた時に担任の先生は書き込んであげるそうです。Ongoingが大事だといいます。カードの「問い」には、音韻の特徴や、フィンランド語では場所には~ssaみたいになるのですが(例えば私は京都出身なので、kyoto-issa みたいに)そういうものも入っていて区別するゲームもありました(私のフィンランド語はまだまだなので、たぶんそんな感じ)。2020年の新学習指導要領では、小学校~高校まで、すべての教科、すべてのホームルームの先生は、「言葉の教師である」という骨子があり、それへの移行を大変意識されています。

このようなグループ活動の進め方は総合や理科など、日本でもしっかりされるベテラン教師も多いです。以前に英語活動で見せていただいた三重の小学校で、「忍者屋敷トリップ」に取り組んでおられ、良い雰囲気でグループスキルを伸ばしておられました。しかし、その時にその点もしっかり評価できる参観者と、「あまり英語は使ってないのでは?」という評価しかできない参観者がいたことを覚えています。どっちかでなく、どっちもなんだと思います。ベテランからは若手にうまく伝わっていない部分や、なぜその活動をそういう方法でするのか・・・という合意や一貫性という教育文化はなかなか伝わってない点はあるかもしれません。グループワークと共に「言語スキル」を本当の文脈で伝え合う環境で育てていく・・・ということがこれからもっと大事だと思います。日本では、外国語活動でも伝え合う場面を減らしてでも、文字指導に必死の場面が多くなりつつありますが、子供がグループで協働するような互いの注意のある中で、言葉力を育てていけたらと感じます。フィンランドの10歳は英語はまだ習いたてなので、先月、Where are you from?をしたばかりです。母語の国語でのこのような様子から考えることは多いと思いました。