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CLILでの深い学びと複合リテラシー

Oliver Meyer先生の話をもう一度箇条書きにしてみました。Oliver先生は、元はずっと地理の先生で教科の先生であったので、CLILに出会ったときに、そのTermは知らなかったけれど、自分がどこかで長年大切にやってきたことと同じだと直感し、さらに理論を徹底して勉強されたようです。(そこの直観は私もおそらく日本の担任の先生も共感する点があると思います)。

・教科の内容を深く知るためには、言語をまず知らなければならない。

・生徒が操作できることの習熟度を見とることが大切である。

そう話して一つのビデオを見せてくれました。ある先生がフロアに座った子供12人ぐらいに、生物の図鑑にのっている息をのむような蝶の写真を見せました。「きれいだな。」その模様や触覚に、子供たちは手を伸ばしたり表現していました。次に先生は、ある子供が描いた蝶の絵を並べて、上と下に置きました。立て看板みたいになった黒板の上と下におけるようになっています。子供らはそれをみたとき「あ~~」と落胆の声を出しました。なぜなら、蝶はあんなに美しくてCoolなのに、その絵といったら、すごく違ったし、多分自分が描いたらそれみたいになると感じたようです。(9歳ぐらい)。そして上の写真と比べながら先生は、様々な言葉を引き出していきます。子供は「その模様のところはもっと・・こう線がこういう向きなんだ」とか、「こっちのはお腹がないと思う」とか色々言っています。先生がそれをまさに理科の言葉(Subject Specific Language)で置き換えて語り返していきました。次々、一つずつ上手にかけた蝶の絵を出して見せました。たぶんそれはその学校の去年の9歳の子供らが、何時間かかけて上手になったときの絵をためてあったんですね。子供らはだんだん、元気になります。比べて、考えて、分かったことを描いたら、自分たちも美しい蝶をスケッチできる気になってきたからです。子供たちはここで「科学者の目」を学んのだのです。

Oliver先生は「この授業のビデオで、深い学びとは何か。子供はどのように進んだか?と投げかけました。How much progress? そして先生はどんな種類のアドバイスをしていったか?What kind of advice for~?とフロアの大学院生に聞きました(この聴講者は40人ぐらい集まり、ユバスキュラ大学で今から1年をかけて、CLILの特訓を受ける院生たちです)。How do children make progress? その前に進んだということへの気づきが授業では大事なのに、どの国もどの教科も、つい先生は16のばらばらのトピックを16回で詰め込んでいる。そうではなくて1つのことを16回かけて、深く学ぶということが大事なのではないか。比べる、分類する、定義する、説明する などといった考える仕事をしっかりしていく。これらは Pellegrino&Hilton,2012などでも述べられる21世紀型スキルにつながる。1)最初は表面的でばらばら、2)抽象的なパターンが出現する 3)パタンが固定しはじめ何らかの意味を持つ 4)内在化する  Surface Learning→Emerging Pattern of Abstraction→Consolidation→Internalizarion その途中には、子供は人に説明するといったタスクをおこなう。

Lantolf&Poehner 2014は、ビゴツキーの理論とも統合し、これらによって学びは転移可能になると言う。

Transferble Skill へ (Material stageからVerbal stageへ、そしてMental Stageへ)この真ん中にあたるVerbal stageには、複合リテラシーを育てる意識を持ってくること、十分な時間をとることが大事である。

丁度私自身も博論にまとめた、Rule-Based SystemとMemory-Based Systemの話もされ、完全に前者には暗いシャドーを当て、右側に明るいシャドーを当てた作図をもちいて、後者が本物の学びであると断言された。

後者には、Communicative Practiceが必要であり、Authentic Complex Tasksが必要である。ストラテジックな言語使用や省察がそこには生じる。 Deeper Learningとはそういうところに発生する。(ペンが追いつ生きませんでしたが、院生らは英語は得意ですがCLILは初めてのようすで、その院生らに伝わるように話をされていました。おそらく自分が学んできた授業とは大きく違うことを、最初につかみ今後に生かされることと思います。Oliver先生はドイツ国なので、子供らの英語力は非常に高く、教科指導の教師も英語を使うことに苦労はないようです。すべての教科において、「言語指導」を包括するという取り組みは非常に広く周知されつつあるようでした。フィンランドでも、2020年に向けて、全ての教科教育の先生は、言語教育の先生でもある、と学習指導要領に提議されています。Do Coyle先生との共著で出されている以下の論文を読むと、複合リテラシーの内容はもっと詳しくわかります。

Oliver Meyer&Do Coyle(2017). Pluriliteracies Teaching for Learning: conceptualizing progression for deeper learning in literacies development

  • European Journal of Applied Linguistics 5(2)
  • DOI: 10.1515/eujal-2017-0006